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大阪高等裁判所 平成6年(ラ)189号 決定

抗告人(申立人) 松島昇

同代理人弁護士 藪口隆

同 植村公彦

同 川﨑清隆

相手方(被申立人) 野村証券株式会社

右代表者代表取締役 酒巻英雄

主文

一、原決定を取り消す。

二、本件を大阪地方裁判所に差し戻す。

事実及び理由

一、本件抗告の趣旨及び理由は、別紙(抗告状)記載のとおりである。

二、当裁判所の判断

本件申立てにかかる「注文伝票」及び「取引日記帳」(以下「本件文書」という。)は、証券会社が顧客から株式売買等の委託を受けたときに、委託者・委託内容等受託に関する事項を具体的に記載して作成する文書であり、顧客と証券会社である相手方との間の株式売買等の委託契約関係の発生及び内容に直接関連する事項を記載した文書であって、挙証者と文書の所持者との間の法律関係につき作成されたものというべきである。のみならず、証券取引法一八八条及び「証券会社に関する省令」一三条一項一、二号によって、証券会社がその作成保存を義務付けられているものであって、証券会社が備忘のため随時任意の事項を記載して作成する個人的メモ等の内部文書とは異なるものといわなければならない。

そうすると、本件文書は、民事訴訟法三一二条三号後段所定の文書に該当すると認めるのが相当であり、これを同条の文書に該当しないものとして本件文書提出命令を却下した原決定は不当であるのでこれを取り消すこととするが、立証の必要性及び関連性等の点につきなお審理することを要するので、本事件を原審に差し戻すこととして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 藤原弘道 裁判官 野村利夫 楠本新)

〈以下省略〉

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